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【レポート】失われた街ー三陸に生きた集落たちー 及川恵子

12月13日(火)から東京都現代美術館エントランスホールで開催されている『失われた街-三陸に生きた集落たち-』。この展示はアーキエイドのプロジェクトのひとつでもあり、東日本大震災発生以後、気仙沼市を中心に様々なワークショップや展示が行われた「失われた街 LOST HOMES 模型復元プロジェクト」の一環である。
(各プロジェクトの詳細はこちらをご覧ください。)

全国15大学18研究室が参加して制作された、 1/500スケールの11の地域の模型。
模型で表された地域は潮の香りが溢れ、海と暮らす人々の日々の営みがあった地域である。生活の匂いがあり、たくさんの人の思い出があり、ふるさとがあった。
3.11のあの日から時間が止まったままの、そしてこの展示のタイトルが示す通り“失われた街”が確実にそこにあった。

展示開始日前日の12日(月)には1ヶ月という短期間の間、驚異的な力をもって模型を制作した学生たちを慰労するオープニングパーティが行われた。
アドバイザーである妹島和世氏、また建築家の原広司氏なども参加し、学生への労いの言葉や勢揃いした模型に対する感動の言葉を口にした。この展示の企画をされているアーキエイド発起人でもあり神戸大学准教授の槻橋修氏も学生の能力の高さに圧倒されたと話す。

全国から集まった建築学科の学生の力量によってなし得たとも言える今回の展示。模型の総数は80を超える。短期間の模型制作期間の中で、学生の皆さんはどんな気持ちを抱えて作業にあたったのだろうか。被災者の方が実際にこの模型を見た時、自分の家が忠実に再現されている事に安堵する方もいるという。そうした細かい注意が張り巡らされた繊細な模型を作る過程で、どのような感情が沸き上がっていたのか。

模型制作には、アーキエイドが2011年夏に宮城県石巻市牡鹿半島で行ったサマーキャンプにも参加した学生も多く関わっている。サマーキャンプでは、“これからのまちづくりを住民とともに考える”という内容であったが、今回の模型制作は、“以前の街の姿を振り返る”、という全く逆のベクトルを向いた作業である。サマーキャンプでは牡鹿半島の東側にある「前網浜/寄磯浜」を担当し、今回は岩手県釜石市鵜住居町の「根浜」を担当した、大阪市立大学B4の塩原裕樹さんは『サマーキャンプで制作した模型には未来があった。その反面この白模型には一見すると現実味がないように見える。しかし、被災地の現状を目の当たりにした今、津波で無くなってしまった街を作り上げる経験ができた事は本当によかった』と話す。
また、この1ヶ月の間、各大学への模型の手配、進行状況の確認などの準備を進めてきたのもまた学生の力が大きい。神戸大学槻橋研究室M1の片岡憲男さん、友渕貴之さんは各研究室をまわり、時には模型制作をする学生から吹き出る声を拾い上げながら準備を進めてきた。
片岡さんは『クオリティ、コスト、スピード。それらをコントロールするのにとても苦労した。模型作業に当たってくれた方にはたくさんの無理を強いてしまったが、そんな中でも学生同士、研究室同士の横のつながりを大事にしていく過程で、思いを共有できた事が嬉しい。この思いは後輩にもつないでいきたい』と話をしてくれた。

復興への道のりが長くなる事は容易に想像が付く。
その道のりの中で、海とともにあった以前の素晴らしい街並みの記憶が薄らいでしまうのも確かだろう。
記憶をとどめておくためにも、また、被災された住民の方が一度元あった街を振り返り、新しい街づくりに向けた意識を強めるためにも、この模型がとても大きな意味をもったものである事、また、真っ白な模型の中にも、もちろん被災した街自体にも、大きな未来がある事を強く感じた。
そして、その復興の最前線を突っ走るのは日本全国から被災地・東北を見つめ、被害の大きさにたじろぎ、それでもなんとかしたいという思いを持った若い学生たちの力にかかっているのだと思う。
この展示や模型制作に携わる事で、復興への思いや、自分にできる事を模索し復興活動の中に身を投じたいという思いをより一層強く感じた学生がいたとしたらそれはなんて心強いことだろう。
オープニングパーティの最後、槻橋氏は『これから社会にでていく学生たちには、ここで培われたネットワークを信頼をし、そのネットワークをぜひアーキエイドで活用してもらいたい。復興支援活動だけではなく、建築を通じた活動に生かしてほしい』と話した。
“今何をすべきか”を議論する事も大事だが、これからの復興活動を担う大きな若い活力/ネットワークがここにある、と強く感じられた事がこの展示の大きな意義だと感じた。

今回展示している白い模型は後日被災地で行われる模型に着色をするワークショップで使用されるという。
白く均一で無機質な模型が地域の住民の方々の作業により熱を帯び、以前の姿を振り返りながら未来を見つめる事ができるあたたかさを持った模型へと姿を変えるのだろう。

建築を学ぶ学生の復興に対する思いを痛感した今、アーキエイドのネットワークの広がりが学生も巻き込んだより大きく強固なものになる事を強く願い、そうした広がりを持てるネットワーク作りのための器をしっかりと作り上げなければならないと強く感じた。

アーキエイド事務局
及川恵子

——

『失われた街ー三陸に生きた集落たちー』
○会期   2011年12月13日(火)〜2012年1月15日(日) (予定)
○会場  東京都現代美術館エントランスホール (入場無料)
○主催   東京都現代美術館(公益財団法人東京都歴史文化財団)、「失われた街」模型復元プロジェクト実行委員会
○企画  槻橋修(建築家)、「失われた街」模型復元プロジェクト実行委員会 ※アドバイザー 妹島和世(建築家)、西沢立衛(建築家)、長谷川祐子(東京都現代美術館・チーフ・キュレーター
○模型制作監修 神戸大学槻橋研究室、名古屋市立大学久野研究室
○模型制作
法政大学渡辺研究室・下吹越研究室/宮城大学中田研究室/神戸大学槻橋研究室/萬田隆+武庫川女子大学有志/神奈川大学曽我部研究室/茨城大学寺内研究室/国士舘大学南研究室/昭和女子大学杉浦研究室/名古屋市立大学久野研究室/名古屋工業大学北川研究室/愛知淑徳大学都市環境デザインコース有志/大阪市立大学宮本研究室/日本大学佐藤研究室・山中研究室/東京理科大学岩岡・安原研究室/早稲田大学古谷研究室(計15大学、18研究室)
○協力  東日本大震災における建築家による復興支援ネットワーク(アーキエイド)、兵庫県立美術館、八潮市
○協賛 総合資格学院/株式会社総合資格、株式会社エーディーワールド、株式会社ストゥディオサカイ

 

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