第9回アーキエイド半島支援勉強会レポート

取材・文:内田伸一(ライター)


2012年7月15日(日)、東京千代田区の首都大学東京 秋葉原サテライトキャンパスで、第9回アーキエイド半島支援勉強会が開かれました。全国各地のアーキエイド参加者が、定期的に東京で開催しているこの勉強会。前半はメディア関係者にもオープンな会議とし、アーキエイドの半島支援活動をより広い人々に知っていただく機会としています。その様子をレポートします。


半島支援のこの1年、これからの1年

メディア公開勉強会は、60分という時間の中で、アーキエイドによる半島支援の現状をコンパクトに、包括的に紹介していくものです。

最初に東北大学の小野田泰明教授から挨拶があり、石巻半島部でのアーキエイドの支援活動について、これまでの経緯と現状の課題が紹介されました。

2011年7月のサマーキャンプから、アーキエイドはその機動力で対象沿岸地域の被災状況をいちはやく調査し、住民の声を聞きながら、行政や土木コンサルティング業者と協力して復興の未来像を提案してきました。また、宮城県七ヶ浜町の中学校再建案を優れた建築家たちのコンペという形で探るプロポーザルの実施など、施設復旧・再生への取り組みも紹介されました。

復興の主体となる社会システムに「具体的な提案を投げ込んで行く」こうした活動の一方で、各浜のライフスタイル調査や、被災者ケアとしての模型展プロジェクトなども展開。従来の建築家像にとどまらない活動が展開されています。

現在の課題も語られました。こうした行政・土木コンサルが策定する復興計画と、アーキエイドが現地調査からつくり出したプランの間に生じるギャップの解決です。今年度は、災害復興住宅の計画が各地で具体化していきます。先延ばしにはできない復興計画の中で、理想的な着地点を見出すことが必要になっています。


地域ごとの復興調査・提案活動の現状

続いて、各地の活動状況を担当者が報告します。雄勝半島については、東京芸術大学のヨコミゾマコト准教授が登壇しました。「文化的・地域的遺伝子の再生計画」をテーマに、巨大堤防の建設ではない、海と共生してきた人々の暮らしを継承できる復興の道を探ります。住民ひとりひとりと対面できるスケールメリットを活かしながら、中心部のマスタープラン作成を目指しています。スクリーンに投影された「海が見えなきゃ生きられん」の言葉も印象的です。

次に、東松島市・宮戸島での活動を妹島和世さん(SANAA)が発表しました。半島の横にある半径2kmのこの島で復興活動に参加していた動きが、昨年のサマーキャンプへの参加でアーキエイドとつながりました。現在の宮戸島は、ボランティアの参加もあって海岸は掃除が行われ、再び泳げる様になりました。また、失われた作業場が各地で立ち上がり始めるなど、活気が少しずつ戻り始めてもいるとのこと。その中で妹島さんたちは住民や地域行政と話し合いの場を設けながら、復興プランづくりに協力しています。

牡鹿半島の状況は、東北工業大学の福屋粧子講師が代表して説明しました。ここではリアス式海岸に点在する約30もの浜(集落)について、現地調査をもとに、高台移転の候補地やその形態など、復興案を行政へ提案しています。同じ牡鹿エリアでも豊かな個性があり、地勢的、産業的、文化的違いもあります。それゆえアーキエイドに参加する全国の大学研究室単位で、それぞれが担当する浜とお付き合いしながらの活動となっています。


各種ワーキンググループの活動

ワーキンググループの形で進む活動もあります。半島の調査・支援活動の中でまとめられた「パタンブック」づくりの紹介は、筑波大学の貝島桃代准教授が担当しました。諸活動の中で得られた知見を整理し、共通の課題をまとめるこのパタンブック。各浜の特徴やライフスタイルをスケッチ等も使って記録したもの、また高台移転についてのイメージを住民からもらい、整理したものなどで構成されます。この日は会場の壁にも、その一部が出力されて展示されました。インターネット上での公開も予定されています。

コアハウス・ワーキンググループの活動を解説したのは、東京工業大学大学院の塚本由晴准教授。被災地のこれからの住宅を、その緊急性や将来性も含めて考える取り組みです。最低限の水周り機能を持つ小さなコアハウスは、今後の家造りのモデルとして考案されました。自宅の再建は大きな願いとはいえ、まだまだ不安定な状勢のなか懸念も尽きません。それが人口流出につながる可能性もあります。そのなかで、このコアハウスはまず「はなれ」のような感覚で比較的低コストで立ち上げ可能で、やがて状況に応じて建て増しもできる家として考えられています。

復興公営住宅ワーキンググループからは、法政大学の下吹越武人教授による説明がありました。小さな各浜へどんな提案が可能かを考えています。シルバーハウジングの考え方も参考に、外部空間の共有や、中庭的スペースの設置など、各戸の住人の社会的孤立を防ぐかたちで考察。実際に法政大学が関わる牡鹿半島の荻浜をモデルにしたスタディも紹介されました。今後は、各浜に応用できるスキームを目指して考察を進めます。

観光ワーキンググループからは、横浜国立大学大学院の小嶋一浩教授が登壇しました。彼らが担当している牡鹿半島の鮎浜は、かつて捕鯨で栄え、近年は金華山の観光も産業になっていた地域です。ワーキンググループでは、被災前も続いていた水産業をメインに、ブルーツーリズムの可能性を探っています。まずはコミュニティのハブとしての拠点をつくり、それが観光のハブとしても発展していくことが狙い。経済効果を生むには一泊以上してもらうことが大切とし、そのための観光コースづくりなどが重要になると考えています。

最後に鮎川の家ワーキンググループから、神奈川大学の稲用隆一助手による活動紹介がありました。被災地の空き家活用を考え、その拠点整備として進めている活動です。鮎川住民の方からアーキエイドの活動のために無償貸与いただいた空き家をスタート地点に、半島に多く存在する空き屋の活用モデルを考えます。今後はミーティングスペースやネット環境の整備も進めるなどしながら、地域住民の方にも活用できる形を探ります。


質疑応答

すべての発表が行われた後、参加メディアとの質疑応答も行われました。今後の課題とされた、行政や土木コンサルとアーキエイドの提案間に生じ得るギャップ解消。これについても知見の集約と共有は行われているのか? という質問には、小野田教授から回答がありました。

いわく、参加メンバー間でのフィードバックは様々な機会に、様々な形で行われており、技術的なもの、土木開発特有のもの、ケースバイケースのカスタマイズも求められるが、そのガイドラインを現在作成中。「両者は敵か味方といった関係ではなく、復興への取り組みを一緒にやっていく関係」であることを強調しました。

また、多くの大学や組織が参加するアーキエイドですが、行政とのコンタクトについては窓口を一本化し、対地域においても、アーキエイド内においても、情報の適切な集約と共有を実現しているとの説明も。

別の新聞メディア関係者からは、アーキエイドがその活動をより積極的にメディア側へアピールすることで、自分たちが追い続けるのが難しい被災地状況にも、光を当てるきっかけがもらえるだろうとの意見も。たとえば前述のコアハウスが最初にどこかで実現した際など、ぜひ知らせて欲しいということでした。


小野田教授は「確かに、互いにボールを投げ合っていくなかで、動きがとまってしまうのは良くない。間に落ちているボールは拾い合い、今後も半歩、一歩と踏み出す形でぜひ協力し合っていきたいです」とコメント。今回のメディア公開勉強会を締めくくりました。

今回の記事は、ライターの内田伸一さんにご協力いただきました。


内田 伸一 Shinichi Uchida(ライター・編集者)
1971年、福島県いわき市生まれ、沖縄育ち。東京在住。岩手大学人文科 学部人文科学科(行動科学研究)卒業。若手建築家たちによる雑誌『A』、英国発 カルチャー誌の日本版『Dazed & Confused Japan』、カルチャーウェブサイト 『REALTOKYO』などに参加。日英バイリンガルの現代美術誌/ウェブサイト『ART iT』で副編集長を務めた後、現在フリーランス。 http://www.shinichiuchida.com/

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