【レポート】「“人”を語る建築家たち」河田將博

9/10 に、アーキエイド・サマーキャンプ報告会の第4弾が行われた。今回は 9/10~16 に展示を行う東北工業大学 福屋研究室+東京理科大学 water edge studio と、東京大学 隈研究室・千葉研究室+藤原徹平の2チームである。

「重層する入り江」というテーマの通り、この2チームが担当した浜は元々ある地形に特徴を持っており、その地理的特徴を読み込むと共に、人と浜、そして牡鹿半島や石巻市といった都市までの様々な視点が提案に取り入れられている。

この未曾有の大災害に対し、我々に何が出来るか。はっきりと確信を持って行動を起こす事は、常に第一線で活躍している建築家でさえ容易ではない。大震災を経験した今、建築家の職能はどこにあるのか。福屋先生は「様々なスケールを身近に感じ、それらをシームレスにつなぐ」建築家のあり方を、東京大学の千葉学先生は「人を集めること」という建築家の一つの職能を、それぞれ口にされていた。このサマーキャンプは、建築家や未来の建築家たちと、建築の力を誰よりも必要としている被災地との仲介役として、大変重要な機会であったのではないだろうか。遠く離れた場所で頭で考えるだけでなく、建築家が先頭に立って実際に行動を起こすことによって、学生にまで広がる大きな動きとなり、建築と人々をつなぐ新たな地平が開かれることを望むばかりである。

サマーキャンプ全体の概要に続き、福屋研、東京大学の順で発表が行われた。今回は初の試みとして、途中でアーキエイドのブースに移動し、実際に展示されている紙面や模型を使ってのプレゼンが行われた。展示に沿ったプレゼンテーションであったため、聞き手にとってもかなり整理された印象を持った。また、本ブースの特徴でもある道に面した大開口部を介して、外部と内部がゆるやかにつながる事で、新・港村を歩く多くの方々にも関心を寄せていただくことができた。

福屋研究室+東京理科大学 water edge studio が担当したのは小渕浜(コブチハマ)。サマーキャンプに先駆けて6月から牡鹿半島全体の調査などの活動を行っていたこのチームは、二つの浜を持ち、複雑な場所の特性をもったこの土地でヒアリングや敷地の調査などをきめ細かく行い、以下のような復興計画の提案を行った。

・高台の住宅地を地理上の理由から2つに分けて計画、それらをつなぐ6mの道を県道から輪を描くように引き込む。

・浜の中心にある薬師山に浸水域である 20m より高い避難道をつくる

・震災前に住宅地のあった谷間の場所を、津波の記憶を継承させる広場とする

牡鹿半島は牡蠣の養殖を中心とした漁業が産業の中心を占めているが、この小渕浜も例外ではない。ヒアリングの結果、真っ先に住民の方から住宅地の高所移転を望む声があり、その一方で表浜と小渕浦という二つの浜を結ぶ谷間と二つの山によって、単純に高所移転を行えば集落が二分されてしまう。また、海から少し離れた県道沿いに住宅地を集中させる案もあったが、それでは被災を免れた浜の近くの家が孤立してしまう。それらの議論の結果、提案された「分けて、つなぐ」という案は、地形に対し真摯に向き合う事で自然と導かれたのではない だろうか。また、住宅地によって挟まれた谷間の場所が住民の集まる広場となる事で、この土地でしか生まれないであろう新しいコミュニティの形がとても魅力的である。

東京大学 隈研究室・千葉研究室+藤原徹平のチームは、石巻に比較的近い小竹浜(コタケハマ)、折浜(オリノハマ)、蛤浜(ハマグリハマ)の三カ所を担当。短期間ながらそれぞれの浜の現状や住民の要望などを的確におさえた提案がされている。

・住宅地は外部からの人の受け入れも視野に入れての高所移転。シェアハウスなど

・被災した海の近くには、漁業整備と集会所などの公共施設を。

・未来に目を向けた教育の起点

小竹浜は、他の浜と違い海から垂直に道が走り、それに沿う形でなだらかな傾斜を持った集落が形成されているため、津波時の高所への移動が比較的容易である事が特徴であり、また石巻との行き来も比較的多く地域として開かれている。復興の拠点となる可能性が大いにあり、また外部から漁業関係や教育関係で人を招くだけでなく、集落の特徴でもある、漁業に関連したアートによる街の活性化は、瀬戸内などを想起させるようで興味深い。

折浜は、石垣のような急な傾斜地にそって海に対面する形で住居が建っており、愛着のある土地に住み続けたい一方、現実的には高台に集合住宅をつくるような事もありだという意見が住民側から出るなど、フレキシブルな考えを持っていた。自分たちの浜を見渡せる眺望の良い場所に、外部からの移住者等も想定した小さいユニットを家族の形態によって様々な形で使うことのできるシェアハウスは、復興としてだけでなく、浜の未来に向けた発展の意味からしても新しい住居形態だと思われる。また、坂の町を活用した、子供達のキャンプ等も非常に魅力的であり、津波被害にあった集落で子供達が元気に走り回る風景は、牡鹿半島全体の将来像の一つではないだろうか。

最後に蛤浜であるが、ここは牡鹿半島の中でも最も過疎化の進んでいる集落で、現在は 5 世帯程度しか居住者がいないという現実がある。高齢者が多く、これから人の手で再び漁業や集落を活性化させる、という事ではなく、千葉先生の言葉を借りれば「前向きな過疎」という方向を住民の方々が現実的に考えている。「死ぬまでここで幸せに暮らせればそれで良い」という声に対し、無理な復興案を押し付ける事は出来ないだろう。そこで提案されたのが、自然循環林を津波で流されてしまった空地に計画するというもの。自然の災害に対し、自然の手を借りて復興しようという提案には、もし集落が将来無くなってしまう事があっても、浜の魅力が残っていれば、長いスパンで見て、また人が集まるだろうという建築家の願いが強く感じられて,心を打たれた。これから 5 世帯しかいないような過疎の地域は増えていく。全てに人が戻る事は期待出来ないが、せめて今そこで暮らしている人が幸せで、そしてもし人の手を離れてもまた人が戻ってくるように、そのための種をまくことも、建築家の仕事なのではないだろうか。

とかく建築家は、面白いもの、新しいものを提案する事に迫られているような部分があり、またそのイメージは社会全体にとって良い方向に働いているとは言い難いのかもしれない。しかし、毎週行われている報告会で、建築家である先生方、そして学生が、生き生きと「人」の話をすることに、私は新鮮さと希望を感じずにはいられない。

河田將博
アーキエイド関東学生スタッフ
芝浦工業大学大学院 原田研究室


発表会の様子


質疑応答の様子


ブース内で行なわれた発表の様子


浜の概要を説明する千葉先生

アーキエイド・サマーキャンプ 2011 地図 JPG 画像
アーキエイド・サマーキャンプ 2011 地図 JPG 画像

PDF 版 アーキエイド・サマーキャンプ 2011 地図 をダウンロードする。

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