【レポート】「リアルに描く、復興の姿」谷口景一朗

9月17日にサマーキャンプ報告会第5弾として首都大学東京小泉雅生研究室と大阪工業大学前田茂樹研究室の発表が行われた。

前田研究室が担当した浜は、大原浜(オオハラハマ)・給分浜(キュウブハマ)という2つの浜。それぞれの浜に対して震災以前の問題点も踏まえつつ、漁港の整備・県道の移設・居住地の高台移転・臨海部の公園の整備といった復興計画が提案されていた。ところでこの2つの浜は、1つの湾に面して隣り合って存在する浜である。距離にして1kmも離れていない2つの浜なので統合という選択肢もあるのではないか、という意見が質疑のときに出た。それに対して前田研究室が行ったヒアリングによると、先祖代々海を、そして港を守ってきた浜同士、なかなか簡単に統合を受け入れることは難しいようだ。これは現地に赴き、浜の方と向き合ったからこそ教えてもらえた生の声である。しかしもっと詳しく2つの浜の現状を聞いてみると、大原浜は住民の大半は公務員であり、漁業で生計を立てている方は数名程度。それに対して給分浜は、住民の8割の方が漁業関係者だという。すでに住民の生活スタイルが大きく異なっている2つの浜が統合することで客観的に大きなメリットを見出せるのなら、浜の方の考えや漁業権など問題は山積みであることはもちろんのことだが、それでもなお統合の可能性を精緻に探ることもまた建築に関わる私達のやるべきことなのかもしれない。前田研究室の今後の継続的なリサーチにより、画一的な統合案とは異なる新たな可能性を持った提案が生まれることを期待したい。

小泉研究室が担当した新山浜(ニイヤマハマ)は牡鹿半島で唯一、家屋被害が全くない浜である。一方で、半島の先端に近く他の浜からも離れているこの浜は、牡鹿半島の中で最もアクセスしづらい浜の1つである。この浜の復興を考えるにあたって、小泉研究室は被害を受けた漁港の整備とともに「限界集落と向き合う」というもう1つのテーマを掲げた上で、エコミュージアムという考え方をこの浜の復興計画案に盛り込んでいる。エコミュージアムとは、地域に受け継がれてきた自然や文化、生活様式等を住民参加によって、保存・活用していくという考え方である。日本全国には、今回のサマーキャンプで取り上げている集落と同規模の漁村集落が6,300箇所以上存在し、その位置を地図上にプロットすると、日本列島の形がそのまま浮かび上がってくるほどである。今回の津波被害からの復興はもちろんのこと、日本中の漁村集落に展開可能なサブテーマを掲げた小泉研究室の試みは大変意義深いものがあると感じた。

小泉研究室が担当したもう1つの浜が、新山浜の北に位置する泊浜(トマリハマ)である。この浜は、他の多くの浜と同じく漁業を主要産業としており、設備の充実した漁港を持った集落である。沖合の島のおかげで津波による被害は他の浜に比べ軽減されたこの浜は、一方で旧市街地の道路が大変狭く緊急車両が通れないという問題を震災以前から抱えていた。そこで、小泉研究室は3つのフェーズに分けた復興計画を提案している。1stフェーズでは、集落の人たちが再び自立できるようまず漁業を復活させるために、防波堤の修繕・漁港の一部嵩上げ・堤防の整備を優先させる。2ndフェーズでは、旧市街地が抱える問題点の解決も兼ねて居住地を高台に移転する。そして、3rdフェーズでは、旧市街跡地を公園として整備し、コミュニティの核・観光客の居場所となり得る場所をつくる、という考え方である。復興計画に時間・コストを意識することは欠かせない。漁港を整備するのにどれくらいの期間が必要なのか、いくらかかるのか、そして整備されるまでの間の集落の方の生活はどうするのか。あるいは、高台移転や公園の整備の場合はどうか。残念ながら現在の日本の状況を考えると、復興に対する資金が潤沢にあるとはとても言えない。復興の最終形の絵を描くことももちろん大切ではあるが、最小限のコストのもとどのような優先順位をつけて復興計画を展開していくか、そのフェーズごとの浜の生活をリアルに描いていくこともまた、私達がやらなければいけない重要な役割である。

今回の復興計画案には、実際に浜を訪れ、集落の方の生の声を聞いたからこそ生まれてきた提案も多く、関わった学生の皆さん、さらには取りまとめをされた各研究室の先生方の熱意がひしひしと伝わってきた。しかし、これで終わってはいけない。せっかく築かれたそれぞれの浜との良好な関係を今後も継続しながら、更に一歩踏み込んだ浜の未来をこれからも各研究室が描いていってくれること、そしてその提案が実現されることを切に願っている。

谷口景一朗
株式会社日建設計

アーキエイド・サマーキャンプ 2011 地図 JPG 画像
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