【レポート】「復興支援とは」栗田有理

6回目となった研究室キャンプ報告会では、京都工芸繊維大と法政大学による発表、石巻市議会委員の阿部氏と参加者による議論が行われた。
京都工芸繊維大も法政大学も住民との議論を重視し、提案が住民の声を具現化したものであるという点が特徴的であった。

京都工芸繊維大は十八成浜(クグナリハマ)を調査した。十八成浜は津波と地盤沈下で壊滅状態となっていた。しかしこの浜は以前から海水浴に多くの人が訪れる賑わいのある浜であり、少し高台に上ると軽井沢を思わせるような場所にある、魅力ある浜である。
この浜で住民と話し合いをするにあたり、案を予めつくってこないことを住民からお願いされたという説明があった。そのため、当初プレゼンテーションを予定していた時間は住民と話し合う会に変更された。住民と話し合う会ではまず、模型に色のついたピンを挿してもらい、その後模型を見ながら話し合いがされた。ピンは色別に、住みたくない場所、住みたい場所、好きな場所、思い出の場所等を示している。案を提供するのではなく、話し合いの場を提供するという点が特徴的で、工夫された話し合いの方法からは話し合いの中心は住民であるという姿勢が強く表れていた。住民との話し合いの結果、二つの案が導かれた。以下がその二案である。

 ・埋め立て案
  震災前に住んでいた場所を埋め立ててかさ上げし、元の場所に戻れるようにする

 ・高台移転案
  高台の環境の良い場所に住居等を移転し、浜の近くには自然公園を設ける

埋め立て案は以前住んでいた場所に戻れるというメリットがあるものの、浜の風景が壊されてしまうことは明白で、十八浜の風景を壊さないでほしいという他の浜の住民から反発もあった。また、ゲストの阿部氏からは議会で埋め立て案は棄却されたと補足された。

法政大学は荻浜(オギノハマ)と小積浜(コヅミハマ)を調査した。荻浜は、カキ養殖発祥の地で漁業が盛んな浜である。しかし震災でほとんどの家が流されるなど被害は甚大で、早急な復興が望まれていた。荻浜での提案である。

 ・海岸に近い県道2号線のかさ上げ・堤防化

 ・海の見える居住環境の整備

 ・公共施設の集約化

単なる高台移転とせず、海の見える場所への移転という点が印象的である。居住地の整備は県道2号線のかさ上げにも連動させて、道路と居住地を傾らかにつなぐ。

漁業が盛んな荻浜に対し小積浜は、牡鹿では珍しく漁業の行われていない浜である。そのため荻浜と隣同士の浜であるとはいえ、異なる提案がされた。

以下は小積浜での提案である。

 ・牡鹿半島の主要道路や避難道となる市道の復旧・整備

 ・カキ養殖用のコンクリートパイルの撤去など、浜の環境の整備

 ・滞在型施設の新設

漁業が行われていなかったため、いわゆるしがらみがなく、外から来た者に対して大変開放的な浜である。そのため復興には交流人口を増やすことが必要であり、道路の整備や宿泊施設やセミナーハウスなど滞在型の施設の整備が提案された。
案をつくるということに囚われるのではなく、住民の話の聞き手となるという役割が重要となった。

今回は初の試みである、ゲストを招いての議論も行われた。石巻市議会議員の方により、被災地の状況や行政の動きが直接参加者に伝わる、かなり現実味ある議論がなされた。

これまで各大学、担当した浜での調査や提案内容を発表してきた。しかし、今回はもっと広い視野でみた復興計画はできないかという点について議論がなされた。
各浜ごとに復興計画をたてても、全ての浜でそれぞれの計画が実行されるとは限らない上、1つの浜が復興したとしても牡鹿半島、また東北全体の復興にはつながらない。
そのため浜の統合という話も出てきていたが、浜の住民は自分の浜に対する思い入れが強く、他の浜で漁業をすることに対し抵抗があるという声は少なくない.そのため特に漁業の盛んな浜では浜の統合に対して否定的である。浜同士をつなぐネットワークとして牡鹿半島全体の評議会を作ったらどうかという意見も出されたが、どうも牡鹿半島全体という点に現実性がないという意見も挙げられ、牡鹿半島全体の復興計画を立てる難しさを感じた。

最後には、アーキエイドとしての役割・意義についても議論された。キャンプに参加した学生からは「たった一回調査をしてきただけで復興支援と呼べるのか」という意見が上がった。これから先も調査を継続したいという声は多いかもしれない。しかしどうしたら調査を継続できるのか、いつまで継続するのか等の問題も生じてくる。復興支援とは何か考え直すときなのかもしれない。

また、新・港村で報告が行われるのも限られた期間である。東北と離れた横浜で報告の場を設けられたのは意義深いことであったが、一方で新・港村で行われた報告会は震災から4、5カ月後という長期的な復興過程のほんの一時点における報告であることを忘れてはならないだろう。

 

アーキエイド関東学生スタッフ

東京工業大学工学部建築学科

栗田有理

 


京都工芸繊維大+神戸大+山岸綾チームの発表


質疑応答の様子


ブースでの展示

アーキエイド・サマーキャンプ 2011 地図 JPG 画像
アーキエイド・サマーキャンプ 2011 地図 JPG 画像

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